経営者・人事担当者からよく寄せられる、労務・社会保険に関する質問にお答えします。気になる質問をクリックすると回答が開きます。
結論として、会社が応じる必要はありません。ただし、この場合は会社都合による休業となるため、休業手当を支払う義務が生じます。
法的根拠
労働契約上、従業員は会社からの指示に従って労務を提供する義務を負っていますが、自ら「働かせてほしい」と主張する権利(就労請求権)は原則として認められていません。
感染症等による休業の場合
従業員の家族が感染症に罹患した場合、従業員本人に症状がなくてもウイルスを持っている可能性があります。職場の安全確保義務から感染拡大防止のために休業を命じることは合理的であり、違法・無効とされる可能性は低いといえます。
ただし、法律で隔離が義務付けられていない疾病の場合は「会社都合の休業」となり、休業手当の支払いが必要です。
休業手当の計算式
休業手当 = 平均賃金 × 60% × 休業日数
(平均賃金 = 直前3か月間に支払われた賃金総額 ÷ その期間の暦日数)
労働基準法では、給与を日割りで計算する際の具体的なルールは設けられていません。そのため、各企業が就業規則や賃金規程などで定める必要があります。
主な日割り計算の方法
【例1】暦日数方式
その月の暦日数(30日・31日など)を基準に計算します。入社・退職で月の途中から勤務した場合によく使われます。
計算式:月給 ÷ その月の日数 × 在籍日数
【例2】当月の所定労働日数方式
会社が定めたその月の労働日数を基準に計算します。欠勤控除や部分勤務の精算時によく使われます。
計算式:月給 ÷ その月の所定労働日数 × 実際に働いた日数
【例3】月平均所定労働日数方式
年間の所定労働日数を12か月で割った平均を使います。月ごとの支給額の変動を避けたい場合に適しています。
計算式:月平均所定労働日数 = 年間所定労働日数 ÷ 12
支給額 = 月給 ÷ 月平均労働日数 × 実働日数
大切なポイント
どの方式を採用するかは就業規則・賃金規程に明記しておく必要があります。方式によって支給額が変わるため、従業員への周知も重要です。
本人の同意を得ることを条件に、メンタルヘルスに関する健康状態について尋ねることは可能ですが、回答を強要することは許されません。
個人情報保護法上の位置付け
病歴などの情報は個人情報保護法上「要配慮個人情報」として位置付けられており、取得には事前に本人から明確な同意を得る必要があります。
メンタルヘルス情報を収集する際のルール
- 情報を取得する目的を明確に示した上で質問する
- あくまで任意での回答とし、強要しない
- 取得した情報は採用判断にのみ使用し、適切に管理する
- 採用・不採用の理由をメンタルヘルスのみに帰することは避ける
注意点
厚生労働省の通達により、労働者が任意で提供した病歴に関する情報は特に慎重な取り扱いが求められています。安易な質問はトラブルの原因となる可能性があります。採用に関するご相談はお気軽にどうぞ。
雇用保険に加入している従業員から離職票の交付を希望された場合、会社は必ず離職票の発行手続きを行う必要があります。これは雇用形態を問わず対象となります。
例外:希望がない場合
従業員から希望がない場合、原則として発行義務はありません。ただし、退職時点で従業員が59歳以上の場合は、本人希望の有無にかかわらず必ず発行しなければなりません。
発行手続きの流れ
- 退職した従業員が雇用保険に加入していることが前提
- 退職日の翌々日から10日以内に「資格喪失届」と「離職証明書」をハローワークへ提出
- 離職証明書は専用用紙(3枚複写式)を使用。ハローワーク窓口で受け取る
- 期限内に提出しない場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金の可能性あり
2025年1月20日以降の新運用
マイナポータルを通じた離職票の発行・受領が可能になりました。退職者は自宅からマイナポータルで受け取ることができます。
再発行について
退職者が離職票を紛失した場合は、退職者本人がハローワークに申請することで再発行できます。会社での手続きは不要です。
従業員に医師の診察を指示することが合理的かつ相当な理由に基づいていれば可能ですが、必ずしも産業医を指定することが認められるとは限りません。
医師受診を命じられる場合
就業規則に医師の診察を指示できる旨の規定があり、かつ診察指示に合理的かつ妥当な理由が存在する場合、業務命令として受診を命じることができます。就業規則に明記がない場合でも、会社の安全配慮義務から同様に命じることが可能です。
産業医の指定について
従業員が産業医ではなく自身が希望する医師による診察を求める場合には、従業員の意思を尊重することが求められます。産業医への面談を強制することは難しい可能性があります。
就業規則への記載が重要
休職制度の運用をスムーズに行うためには、就業規則に以下を明記しておくことが重要です。
- 休職の発令要件と手続き
- 会社指定医師(または産業医)への受診義務
- 復職の判断基準
退職した従業員が会社の貸与物(パソコン等)を返却しない場合でも、最終賃金からの一方的な控除は原則として認められません。
なぜ控除できないのか
労働基準法第24条(賃金全額払いの原則)により、賃金は全額支払わなければなりません。損害賠償と賃金は相殺できないのが原則です。
取るべき対応
- まず書面で返却を請求する:内容証明郵便などで返還請求を行う
- 民事上の損害賠償請求:返却されない場合は、別途民事訴訟や少額訴訟で賠償請求を行う
- 同意書の取り付け:退職時に本人の同意を得た上で控除する場合は事前の書面合意が必要
予防策
採用時・貸与時に「退職時に返却すること」「返却しない場合は損害賠償を請求することがある」旨を書面で明確にしておくことが重要です。就業規則や貸与品管理規程の整備をお勧めします。
会社の責任によるうつ病の発症が事実として認められない場合、申請を断ることはできます。「会社のせい=労災」となるかどうかは、以下の3つの要件をすべて満たすかによります。
労災認定の3つの要件
- 医師の診断書などによりうつ病が発症していると証明できる
- 発症の直前6か月間に、業務上で強い精神的負担があった(セクハラ・パワハラ、過度の長時間労働、配置転換など)
- プライベートな問題など、業務以外の心理的負担が主な原因ではない
会社が取るべき対応の手順
- 医師の診断書でうつ病の発症を確認する
- 従業員から、うつ病の原因と考えられる事由についてヒアリングを行う
- 現在の状態で、雇用契約に基づく業務が遂行できるかを確認する
- 休職の必要性を検討し、社内規定に沿って運用する
- 社内で事実関係を調査・整理する
- 産業医がいる場合は、産業医の意見を取り入れる
- 社内調査で会社側の要因が認められれば労災申請を行う
うつ病の発症はトラブルに発展する恐れもあります。十分に話し合い、客観的な事実を集めることが重要です。
労働基準法では、タイムカードの記録時間よりも労働時間の実態を優先しています。早出が労働時間に該当するかは、以下の基準で判断します。
労働時間に該当する場合
- 会社の指示や命令がある(朝礼・業務準備・書類作成など)
- 業務に関連する活動をしている(取引先とのやりとりなど)
- 会社が黙認している(早出が常態化している場合)
労働時間に該当しない場合
- 休憩や雑談など私的な時間
- 自主的に行う業務に関係しない活動(個人の資料整理・私的メール確認など)
対応策
- ルールの明確化:就業規則や労働契約で、労働時間の定義や業務開始時刻を明確に示す
- 早出を制限する仕組みの導入:申告制のルールを取り入れたり、不要な場合は指導する
まとめ
早出している時間が業務に関連し、会社がその労働を把握している場合は、給与を支払う義務があります。状況を正確に把握し、就業規則で明確に定めておくことが重要です。
2024年12月2日をもって、現在の健康保険証の「新しい発行」は終了しました。既に手元にある保険証は、記載の有効期限まで利用できます(最長で2025年12月1日まで)。
マイナ保険証を持っていない方は?
マイナンバーカードを持っていない方やマイナ保険証の利用登録をしていない方については、保険者から「資格確認書」が送付されます。これを提示することで従来どおり保険診療が受けられます。資格確認書を受け取るための手続きは不要です。
マイナ保険証の利用登録確認・登録方法
- マイナポータルで登録状況の確認・登録が可能
- 医療機関・薬局の顔認証付きカードリーダーでも登録可能
- セブン銀行ATMからの登録も可能
会社として対応すべきこと
- 健康保険の「被保険者証」の発行が変わるため、新入社員への説明方法を見直す
- マイナ保険証未登録の従業員には資格確認書が発行されることを周知する
社員が忌引きを理由に休暇を取得する場合、この休暇は一般的に「特別休暇」と呼ばれます。特別休暇の条件や付与日数については、法律上の義務はなく、企業が自主的に決定するものです。
慶弔休暇の付与日数の目安
| 事由 | 目安日数 |
|---|---|
| 社員自身の結婚 | 5日程度 |
| 近親者(親・子・兄弟姉妹)の不幸 | 3日程度 |
| 配偶者の出産 | 1〜3日程度 |
| 義理の両親の不幸 | 1日程度 |
| 親戚の結婚・不幸 | 1〜3日程度 |
特別休暇制度を整備する際のポイント
就業規則に以下の点を明示しておくと、社員が安心して休暇を取得しやすくなります。
- 対象者:正社員だけでなく、パート・アルバイトも含むかどうかを決定
- 特別休暇の種類:どの休暇をどの場面で取得できるか明確に定義
- 取得日数:各休暇の付与日数を具体的に決定
- 届出方法:取得時に必要な届出の期限・方法を定める
- 取得時の賃金:有給・無給の取り扱いを明記
突然の事態に慌てることのないよう、就業規則にルールを記載しておくことをお勧めします。
就業規則に身だしなみ規定を設けること自体は認められていますが、その内容や懲戒処分の程度には一定の制約があります。
身だしなみ規定が認められる範囲
業務の性質・顧客への影響・安全衛生上の理由から合理性が認められる場合は規定できます。
- 医療・介護:衛生上の理由から染髪・ネイル禁止は認められやすい
- 接客業:清潔感に関する規定は比較的認められやすい
- 製造業:安全上の理由から長髪禁止・帽子着用義務は認められる
懲戒解雇に問題がある場合
軽微な身だしなみ違反を理由に懲戒解雇とすることは、「解雇権の濫用」として無効となるリスクが高いです。労働契約法16条により、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です。
懲戒処分の段階的対応
- 口頭・書面での指導・注意
- 戒告・けん責(始末書の提出)
- 減給(1回の額が平均賃金の1日分の半額以下等の制限あり)
- 出勤停止
- 降格・諭旨解雇
- 懲戒解雇(最終手段・繰り返し指導しても改善がない場合等)
就業規則整備のポイント
懲戒処分が有効に機能するには、就業規則に懲戒事由と処分の種類が明記されていること、かつ従業員に周知されていることが必要です。
就業規則に「休職期間満了後、復職できない場合は退職とする」旨の規定があれば、その規定に基づいて雇用契約を終了させることは可能です。ただし、いくつかの条件を満たす必要があります。
自動退職とするための条件
- 就業規則に休職期間満了後の自動退職規定が明記されていること
- 休職期間中に復職可能かどうかを適切に確認していること
- 本人への通知・確認を行っていること
- 障害者雇用促進法等の合理的配慮義務に違反していないこと
注意点
精神疾患による休職の場合は特に慎重な対応が必要です。「復職の意思表示がない」だけで機械的に退職扱いにすることは、後に訴訟リスクとなる可能性があります。
- 本人と連絡を取り、状況・意思を確認する
- 主治医の意見を確認する
- 復職に向けた調整の余地がないか検討する
就業規則の整備が重要
休職・復職のルールが就業規則に明記されているかどうかで、対応の可否が大きく変わります。まずは現行の就業規則を確認し、必要であれば整備することをお勧めします。
原則として、使用者が未使用の有給休暇を買い取ることは労働基準法違反となります。ただし、例外的に認められる場合があります。
原則:有給休暇の買い取りは違法
有給休暇は「取得させること」が法の目的です。金銭で代替することは、休暇取得を妨げるものとして禁止されています。
例外として認められるケース
① 退職時の残余有給休暇の買い取り
退職後は有給休暇を取得する機会がなくなるため、退職時に未使用分を買い取ることは違法ではありません。ただし買い取り義務はありません。
② 法定日数を超える有給休暇(法定外有給)の買い取り
会社が法定日数を超えて独自に付与している有給休暇(特別有給)については、就業規則の定めに従って買い取ることが可能です。
③ 時効によって消滅する部分の買い取り
有給休暇は2年間で時効消滅します。時効で消滅する分を任意に買い取ることは認められています(義務ではない)。
有給休暇の計画的付与
有給休暇が取れない・余ってしまうという場合は、計画的付与制度の活用を検討しましょう。就業規則に計画的付与の規定を設けることで、特定日に一括して取得させることが可能になります。

