退職した社員や在職中の社員から、突然「未払いの残業代を支払ってほしい」と請求される——。近年は労働時間の記録も残りやすく、請求額が数十万〜数百万円にのぼるケースもあります。一方で、請求された金額がそのまま正しいとは限りません

この記事では、広島県の社会保険労務士が、残業代を請求された会社が最初に確認すべきことと、金額を正しく見極めるための論点を、経営者の目線で整理します。

結論:まずは①請求内容の確認 ②労働時間の事実確認 ③自社の状況の整理。感情的に対応せず、支払う前に専門家へご相談ください。

こんな状況ではありませんか?

  • 退職した社員から内容証明で残業代を請求された
  • 「タイムカードどおりに支払ってほしい」と言われたが、実態と違う気がする
  • 固定残業代(みなし残業)を支払っているのに、さらに請求された
  • 管理職として扱っていた社員から請求された

まず知る:残業代(割増賃金)の基本

区分 割増率
時間外労働(法定の1日8時間・週40時間を超える分) 25%以上
深夜労働(22時〜翌5時) 25%以上(時間外と重なれば合算)
法定休日労働 35%以上
1か月60時間を超える時間外労働 50%以上(2023年4月から中小企業にも適用)
  • 時効(請求できる期間):賃金請求権の時効は、当分の間3年とされています(本則は5年)。過去にさかのぼって請求されることがあります。
  • 付加金・遅延損害金:裁判になると、未払い額と同額までの付加金(労働基準法114条)や遅延損害金が上乗せされることがあります。

請求されたら:やるべき初動5ステップ

  1. 請求内容を正確に確認する(誰が・どの期間・いくら・どんな計算根拠か。内容証明は受け取り日を記録)
  2. 労働時間の事実を確認する(タイムカード・PCログ・入退館記録・業務実態。在社時間がそのまま労働時間とは限りません)
  3. 自社の状況を整理する(固定残業代の有無、管理監督者への該当性、労働時間性など=後述)
  4. 記録を保全する(記録の破棄・改ざんは決して行ってはいけません。かえって不利になり、重い責任を問われます)
  5. 回答する前に専門家へ相談する(支払うかどうかを判断する前に、社労士・弁護士と方針を決める)

請求額を左右する主な論点

請求された金額が、常にそのまま正しいとは限りません。次の論点によって、法律上支払うべき金額が変わることがあります。

  • 固定残業代(みなし残業)が有効か:金額・対象時間数が明示され、超過分を別途精算していれば、その範囲は支払い済みと整理できる場合があります(要件を満たさないと無効になることもあります)。
  • 管理監督者にあたるか:労働基準法上の「管理監督者」は時間外・休日の割増の対象外ですが、役職名だけの“名ばかり管理職”は認められません(権限・待遇・労働時間の裁量などで実質的に判断されます)。
  • 労働時間にあたるか:手待ち時間・持ち帰り作業・自己研鑽などが、実態として労働時間といえるかが争点になります。
  • 変形労働時間制・事業場外みなし労働時間制などの適用状況。

※いずれも「そう整理できる可能性がある」という話であり、実際には実態と証拠によって判断されます。個別の判断は専門家にご相談ください。

やってはいけないこと

  • 慌てて言い値のまま全額を支払う(本来は支払い義務のない部分まで支払ってしまうことがあります)
  • 請求を無視する(労働基準監督署の是正勧告・労働審判・訴訟に発展し、付加金のリスクもあります)
  • タイムカード等の記録を破棄・改ざんする(最も重い責任を問われます)
  • 請求してきた社員を報復的に不利益に扱う(別のトラブルにつながります)

大切なのは「請求される前」の予防

  • 労働時間の客観的な把握(打刻・PCログなど)
  • 就業規則・賃金規程の整備固定残業代の正しい設計(金額・時間数の明示と精算)
  • 36協定の適切な締結・運用

当事務所のサポート

引地社会保険労務士事務所では、経営者の立場に寄り添いながら、法令に沿った適切な対応を、初動から解決まで一気通貫でサポートします。

  • 請求内容の精査と、法律上支払うべき額の見極め
  • 労働時間・固定残業代・管理監督者などの論点整理
  • 労働基準監督署・労働審判への対応サポート
  • 再発防止(賃金規程・固定残業代の設計、勤怠管理の見直し)

料金:顧問契約に含みます(スポット相談は1時間11,000円〜)。請求書を受け取ったら、支払う前にまずご相談ください。

そのお悩み、就業規則・賃金規程の見直しで防げるかもしれません。

御社の規程にひそむ残業代リスクを、無料でチェックいたします。

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よくある質問(FAQ)

Q. 請求された残業代は、そのまま全額を支払うべきですか?

一概にそうとは言えません。労働時間の実態や固定残業代の有無などによって、法律上支払うべき金額が変わることがあります。支払う前にご相談ください。

Q. 何年前までさかのぼって請求されますか?

賃金請求権の時効は、当分の間3年とされています(本則は5年)。過去分をまとめて請求されるケースがあります。

Q. 「管理職だから残業代はかからない」と考えていました。問題ありますか?

労働基準法上の「管理監督者」は限定的で、役職名だけでは認められません。実態の確認が必要です。

Q. 顧問契約をしていなくても相談できますか?

はい、スポット相談(1時間11,000円〜)で対応します。

監修者

引地 昌(ひきじ まさし)/引地社会保険労務士事務所 代表・社会保険労務士
税理士業界で20年、経営と数字の現場を経験した後、社会保険労務士として開業。広島県を拠点に全国オンライン対応。「現場を知る社労士」として、経営者の右腕となる労務サポートを提供します。