「この社員にはもう辞めてほしい」——経営者であれば、一度は頭をよぎる場面かもしれません。しかし日本では、会社の都合だけで自由に解雇することはできません。手順を誤った解雇は「不当解雇」として無効になり、復職・未払い賃金(バックペイ)・多額の金銭解決につながることもあります。
この記事では、広島県呉市の社会保険労務士が、トラブルにしないための「解雇の正しい進め方」を、経営者の目線で整理します。
結論:解雇は「最後の手段」。①正しい理由 ②十分な手順と記録 ③法律上の手続きの3つが揃って初めて有効になります。
こんなお悩みはありませんか?
- 勤務態度・能力に問題のある社員に辞めてほしいが、進め方が分からない
- 「解雇したら訴えられるのでは」と不安で動けない
- 口頭で「クビ」と言ってしまいそう/言ってしまった
- 問題社員に手を焼いているが、何から手をつければいいか分からない
まず知る:解雇には3つの種類がある
| 種類 | どんな時 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 普通解雇 | 能力不足・勤務不良・健康上の理由など | 改善機会を与えたか・客観的な記録があるかが問われる |
| 懲戒解雇 | 重大な規律違反(横領・重大な経歴詐称など) | 就業規則の懲戒事由・本人への弁明の機会・手続きが必須 |
| 整理解雇 | 経営悪化による人員削減(リストラ) | 4要件を満たす必要があり、ハードルが高い |
いずれも共通して、労働契約法16条により「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は“無効”」とされています(解雇権濫用法理)。
整理解雇の4要件:①人員削減の必要性 ②解雇回避の努力 ③人選の合理性 ④手続きの妥当性
正しい進め方:5つのステップ(普通解雇の例)
- 問題行動を具体的に特定する(「態度が悪い」ではなく、いつ・何が・どう問題かを事実で)
- 注意・指導を行い、改善の機会を与える(口頭→書面へ。改善目標と期限を示す)
- 指導の記録を残す(指導書・面談記録・メール。後で「指導していない」と言われないために)
- 配置転換や退職勧奨など、解雇以外の手段を検討する(解雇は最後の手段)
- それでも改善されない場合に、法律上の手続きを踏んで解雇する
解雇に踏み切る時の法律上の手続き
- 30日前の解雇予告、または30日分以上の解雇予告手当(労働基準法20条)。即時に辞めてもらう場合は予告手当が必要です。
- 就業規則の解雇事由に該当していること(懲戒解雇なら懲戒事由+弁明の機会)。
- 求められたら解雇理由証明書を交付(労働基準法22条)。
やってはいけないNG(トラブルの典型)
- 感情的に「明日から来なくていい」と口頭で言う(記録も予告もなく、最も危険)
- 指導・改善機会なしに、いきなり解雇する
- 妊娠・出産・育休取得・労災・正当な権利行使などを理由にする(法律で禁止された解雇)
- 退職を執拗に迫る「退職強要」(適切な退職勧奨との線引きが重要)
「解雇」と「退職勧奨」は違います
退職勧奨は、会社が退職を“お願い”し、本人の合意で退職する方法です。合意退職なら「不当解雇」の争いになりにくく、円満に進めやすい選択肢です。ただし、強要になると違法です。どちらを選ぶべきかは、状況によって変わります。
当事務所のサポート
引地社会保険労務士事務所では、「法律上はこうです」で終わらせず、御社が“実際にどう動けばよいか”の具体的な行動プランをご提案します。
- 解雇・退職勧奨の進め方の設計、指導記録の整え方
- 就業規則・規程の見直し(解雇・懲戒の根拠を整える)
- 労働基準監督署・労働審判への対応サポート
- 経営者側の立場で、当日中の初動アドバイス(緊急対応可)
料金:顧問契約に含みます(スポット相談は1時間11,000円〜)。まずは無料相談でお話をお聞かせください。
よくある質問(FAQ)
Q. 試用期間中なら自由に解雇できますか?
試用期間中でも「自由に」解雇できるわけではありません。本採用後よりは広く認められる傾向がありますが、合理的な理由と手続きは必要です。
Q.「明日から来なくていい」と言ってしまいました。大丈夫ですか?
解雇予告手当や手続きの問題が生じる可能性があります。早めにご相談ください。発言の撤回・整理ができる場合もあります。
Q. 解雇予告手当はいくらですか?
原則、平均賃金の30日分以上です(予告日数に応じて調整)。計算方法を含めてご案内します。
Q. 顧問契約をしていなくても相談できますか?
はい、スポット相談(1時間11,000円〜)で対応します。
監修者
引地 昌(ひきじ まさし)/引地社会保険労務士事務所 代表・社会保険労務士
税理士業界で20年、経営と数字の現場を経験した後、社会保険労務士として開業。広島県呉市を拠点に全国オンライン対応。「現場を知る社労士」として、経営者の右腕となる労務サポートを提供します。

