「毎月みなし残業手当を払っているから大丈夫」——その認識、点検してみませんか
クリニックの給与に「みなし残業手当」や「固定残業手当」を組み込んでいる院長先生は少なくありません。「一定額を毎月払っているのだから、残業代はそれでまかなえている」——そう考えている先生も多いと思います。
ところが、この固定残業代(みなし残業)は、設計を少し誤ると”払ったことにならない”ことがある、いわば取り扱いに注意が必要な仕組みです。私たちは広島・呉を拠点に、医科・歯科クリニックをはじめ医療機関の労務を数多くお手伝いしてきましたが、給与の見直しをお預かりすると、この固定残業代のつくり方でヒヤリとする例に出会うことがあります。
以下では、弊所の見解として、院長先生が見落としがちな3つの落とし穴を整理します。
落とし穴①:金額と「何時間分か」が書面に明記されていない
固定残業代が有効と認められるためには、「その手当が残業代であること」「何時間分に相当するのか」が、就業規則や賃金規程、雇用契約書ではっきり示されていることが土台になります。
「なんとなく手当として付けている」「金額は決めているが、何時間分かは決めていない」——こうした状態だと、後になって「これは残業代ではない」と受け取られ、別途残業代を求められる余地が残ります。まずは、手当の性質と対応する時間数が書面で結びついているかを点検されることをおすすめします。
落とし穴②:固定分を超えた残業の「別途精算」がされていない
固定残業代は「決めた時間分までをあらかじめ払っておく」仕組みです。したがって、その時間を超えて残業が発生した月は、超えた分を別途支払うという運用がセットになります。
ここが抜けていると、「固定残業手当を払っているから、何時間残業しても追加はなし」という運用になりがちで、これは未払いの火種になります。クリニックは繁忙期や急な患者対応で残業が伸びることもあります。超過分を精算する仕組みが給与計算に組み込まれているかは、特にご確認いただきたい点です。
落とし穴③:基本給の一部を”みなし”に付け替えている
「基本給の内訳を組み替えて、一部を固定残業手当にする」——こうした形は、実態と名目がずれていると見なされ、有効性を否定されやすくなります。手当の名前を付けただけでは、残業代を払ったことにはなりません。
大切なのは、基本給・各手当・固定残業代のそれぞれが、意味のある区分として説明できる状態にしておくことです。
クリニックだからこその難しさ
クリニックは少人数で、院長先生ご自身も現場に立つことが多い職場です。そのぶん、一人ひとりの労働時間や残業の実態が見えにくく、給与の仕組みが「なんとなくの慣習」で続いていることがあります。だからこそ、一度立ち止まって設計を確認する価値があります。
私たちは税理士業界で20年、経営と数字の現場を見てきた立場から、給与の仕組みを「支払いを抑えるための道具」ではなく、院長先生とスタッフの双方が納得できる、分かりやすい形として整えるお手伝いをしています。正しく設計された固定残業代は、スタッフにとっても「何時間分がどう支払われているか」が見えて、安心につながります。
まずは、現状を知るところから(無料)
「うちの残業代の払い方、いまの形で大丈夫だろうか?」——そう思われたら、就業規則・賃金規程の観点から、まずは無料の診断で現状を整理しませんか。
就業規則 無料診断(医科・歯科クリニックの院長先生向け・約2分でお申し込み)
お預かりした規程を社会保険労務士が拝見し、通常3〜5営業日で診断レポートをメールでお返しします。診断は無料で、レポートをご覧いただくだけでも大丈夫です。しつこい営業はいたしません。
「まず少し聞いてみたい」という段階でしたら、クリニック向けLINEからチャット感覚でもご相談いただけます。
よくある質問(FAQ)
Q. 毎月みなし残業手当を払っていれば、残業代を別に払う必要はありませんか?
固定残業代は「決めた時間分まで」を前払いする仕組みです。その時間を超えて残業が発生した月は、超えた分を別途支払う運用が前提になります。
Q. 固定残業手当について、就業規則や雇用契約書には何を書いておけばよいですか?
「その手当が残業代であること」「何時間分・いくらに相当するのか」に加えて、固定分を超えて残業が発生した場合は超過分を別途支払う旨まで書面に定めておくことが大切です。なお、求人票・募集要項でも「固定残業代を除いた基本給の額」「固定残業代の時間数と金額」「超過分を追加で支払う旨」の3点を明示することが厚生労働省の指針で求められています。
Q. 基本給の一部を固定残業手当に振り替える形でもよいですか?
実態と名目がずれていると、有効性が否定されやすくなります。基本給・各手当・固定残業代のそれぞれを、意味のある区分として説明できる形にしておくことをおすすめします。
Q. 自院の固定残業代がこのままで大丈夫か不安です。何から始めればよいですか?
まずは就業規則・賃金規程の現状把握からです。当事務所では医科・歯科クリニックの院長先生向けに無料診断を行っており、規程を拝見して通常3〜5営業日で診断レポートをメールでお返しします。
監修者
引地 昌(ひきじ まさし)/引地社会保険労務士事務所 代表・社会保険労務士
税理士業界で20年、経営と数字の現場を経験した後、社会保険労務士として開業。広島県を拠点に全国オンライン対応。「現場を知る社労士」として、経営者の右腕となる労務サポートを提供します。


