年末年始の休みの日程を決める時期になりました。「12月28日(月)も休みにして、まとめて休めるようにしたい。その日は有給休暇を使ってもらおう」と考える会社もあると思います。
会社が日を決めて有給休暇を取ってもらうには、「年次有給休暇の計画的付与」という制度を使います。就業規則への定めと、従業員の代表との労使協定が必要です。年5日の取得義務にもとづく時季指定(2章)の場面を除けば、協定なしに会社が「この日は有給休暇で休んで」と決めることはできません。
この記事でわかること
- 計画的付与とはどんな制度か
- 年5日の取得義務との関係
- 導入に必要な手続き(就業規則・労使協定)
- 有給休暇の日数が少ない人の扱い
- 年末年始に向けた進め方
📝1. 計画的付与とは?——会社が日を決めて有給休暇を与える制度
有給休暇は、本来、従業員が「この日に休みたい」と請求した日に与えるものです(労働基準法第39条第5項)。計画的付与は、その例外です。従業員の過半数で組織する労働組合(ない場合は従業員の過半数を代表する者)と書面で協定を結べば、協定で決めた日に有給休暇を与えることができます(同条第6項)。
ただし、対象にできるのは、一人ひとりの有給休暇の日数のうち5日を超える部分だけです。少なくとも5日は、従業員が自由に使える日として残します。
| 持っている有給休暇の日数 | 計画的付与にできる日数 | 本人が自由に使える日数 |
|---|---|---|
| 10日 | 5日まで | 5日以上 |
| 15日 | 10日まで | 5日以上 |
| 20日 | 15日まで | 5日以上 |
📝2. 年5日の取得義務との関係
年10日以上の有給休暇が与えられる従業員には、会社は、そのうち5日について、与えた日(基準日)から1年以内に時季を指定して取らせなければなりません(労働基準法第39条第7項)。違反には30万円以下の罰金の定めがあります(同法第120条)。
計画的付与で与えた日数は、この5日に数えられます。本人が自分で請求して取った日数も同じです(同条第8項。5日を超えて与えた場合は5日として数えます)。
ポイント たとえば年末年始に計画的付与で2日与えた人は、年5日のうち残りの3日を、本人の取得か会社の時季指定でそろえれば足ります。年5日の取得義務への対応としても使える制度です。
有給休暇を与えたら、時季・日数・基準日を従業員ごとに記録した「年次有給休暇管理簿」を作ります。与えた期間中と、その期間が終わってから5年間(当分の間は3年間)保存します(労働基準法施行規則第24条の7・附則第71条)。計画的付与で与えた日も記録します。
📝3. 導入に必要な手続き
(1) 就業規則に定める
まず、就業規則に計画的付与の定めを置きます。厚生労働省の案内では、次のような規定例が示されています。
前項の規定にかかわらず、労働者代表との書面による協定により、各労働者の有する年次有給休暇日数のうち5日を超える部分について、あらかじめ時季を指定して取得させることがある。
休暇に関することは、就業規則に書かなければならない事項です(労働基準法第89条)。就業規則を変えるときは、従業員の過半数で組織する労働組合(ない場合は過半数代表者)の意見を聴きます(同法第90条)。常時10人以上の従業員がいる会社は、変えた就業規則に意見書を付けて労働基準監督署に届け出ます(同法第89条・第90条)。
(2) 労使協定を結ぶ
従業員の過半数で組織する労働組合(ない場合は過半数代表者)と、書面で協定を結びます。この協定は、労働基準監督署への届出は不要です。結んだ協定は、従業員に周知します(同法第106条)。協定で定める項目は次の5つです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ① 対象者 | 計画的付与の時季に育児休業や産前産後休業に入る予定の人、退職する予定の人は、対象から外しておきます |
| ② 対象となる日数 | 有給休暇の日数のうち5日を超える部分 |
| ③ 具体的な方法 | 一斉付与なら付与日、交替制ならグループ別の付与日、個人別なら計画表を作る時期と手続き |
| ④ 日数が少ない人の扱い | 5日を超える有給休暇がない人をどうするか(4-(1)を参照) |
| ⑤ 付与日の変更 | 付与日を変えることが予想されるときの手続き |
(3) 付与の方式は3つ
- 一斉付与:事業場全体を休みにして、全員に同じ日に与える
- 交替制付与:班・グループごとに日をずらして与える
- 個人別付与:計画表を作り、一人ひとりの日を決めて与える
年末年始の連休をつくるなら、一斉付与がわかりやすい方法です。年末も窓口を閉められない部署がある会社は、交替制を組み合わせます。
⚠️4. 年末年始に使うときの注意点
(1) 有給休暇の日数が少ない人(入社して間もない人など)
一斉に休む日に、5日を超える有給休暇を持っていない人がいる場合は、次のどちらかの措置をとります(厚生労働省の案内)。
- その日を有給の特別休暇にする
- 休業手当として平均賃金の60%以上を支払う(休業手当の定めは労働基準法第26条)
法律どおりの付与なら、有給休暇は入社から6か月続けて勤務し、出勤率が8割以上になって初めて与えられます(同法第39条第1項)。12月28日の時点では、6月末ごろより後に入社した人には、まだ有給休暇がありません。週の勤務日数が少ないパートの人も、日数が5日を超えないことがあります。
(2) もともと休日の日は対象にならない
有給休暇は、働く義務のある日(労働日)について、その義務を免除し、賃金を支払う制度です(厚生労働省「確かめよう労働条件」)。就業規則で休日と決めている日は、もともと働く義務がありません。計画的付与で充てる日は、労働日から選びます。
注意 「これまで休日だった12月29日〜31日を労働日に変えて、有給休暇に充てる」というやり方は、会社の休日を減らすことになります。従業員の合意がないまま、就業規則の変更で労働条件を不利益に変えるには、変更後の就業規則の周知と、変更の合理性が必要です(労働契約法第9条・第10条)。進める前にご相談ください。
(3) 協定は年末より前に
計画的付与は、協定で決めた日に有給休暇を与える制度です。年末年始に使うなら、それより前に就業規則を整え、協定を結び、従業員に周知しておきます。
🗓️5. 例:12月28日(月)を計画的付与にすると
土日休みで、12月29日から1月3日を休日としている会社の例です。2026年は12月28日が月曜日なので、この日を計画的付与の日にすると、12月26日(土)から1月3日(日)までの9連休になります。
| 日付 | 扱い |
|---|---|
| 12月26日(土)・27日(日) | 休日(土日) |
| 12月28日(月) | 計画的付与(有給休暇) |
| 12月29日(火)〜31日(木) | 休日(年末) |
| 1月1日(金)〜3日(日) | 休日(年始) |
この例で計画的付与にするのは1日なので、対象は、5日を超える有給休暇を持っている人(6日以上ある人)です。それより少ない人は、4-(1)の扱いを協定で決めておきます。
✅6. 今からの進め方
- 就業規則に、計画的付与の定めがあるか確認する
- 定めが無ければ規定を追加する(過半数労働組合または過半数代表者の意見を聴き、常時10人以上の会社は意見書を付けて届け出る)
- 協定の相手(過半数労働組合、ない場合は過半数代表者)を確認する
- 労使協定を書面で結び、従業員に周知する
- 付与した日を年次有給休暇管理簿に記録し、年5日の取得状況を確認する
📝よくある質問
労使協定は労働基準監督署に届け出ますか。
届け出は不要です。書面で結び、従業員に周知します。
有給休暇が10日の人は、何日まで計画的付与にできますか。
5日を超える部分が対象なので、5日までです。残りの5日は、本人が自由に使える日として残します。
計画的付与で休んだ日は、年5日の取得義務に数えられますか。
数えられます(労働基準法第39条第8項)。5日を超えて与えた場合は、5日として数えます。
入社したばかりで有給休暇がない人も、一斉に休ませてよいですか。
休ませることはできますが、その日を有給の特別休暇にするか、休業手当として平均賃金の60%以上を支払います。
就業規則で休日になっている日に、有給休暇を使ってもらえますか。
有給休暇は、働く義務のある日(労働日)の義務を免除するものです。休日はもともと働く義務がないので、充てる日は労働日から選びます。休日を労働日に変えて有給休暇に充てると会社の休日が減るので、従業員にとって不利益な変更にあたらないか、慎重な検討が必要です。
📌まとめ
- 会社が日を決めて有給休暇を与えるには、計画的付与の制度を使う。就業規則の定めと書面の労使協定が必要(協定の届出は不要)
- 対象は有給休暇の日数のうち5日を超える部分だけ
- 計画的付与で与えた日数は、年5日の取得義務に数えられる(5日まで)
- 日数が足りない人は、有給の特別休暇か休業手当(平均賃金の60%以上)で対応する
- 休日を労働日に変えて有給休暇に充てるのは、休日が減る変更になるので慎重に
就業規則に計画的付与の定めがあるか、労使協定をどう書けばよいか、確認したいときはお声がけください。呉市の社労士が、会社の状況に合わせて整理します。
就業規則をいつ作る必要があるかは、就業規則は何人から義務?の記事もあわせてご覧ください。
出典(e-Gov法令検索・厚生労働省)
・労働基準法(第26条、第39条、第89条、第90条、第106条、第120条)
・労働基準法施行規則(第24条の7、附則第71条)
・労働契約法(第9条、第10条)
・厚生労働省 働き方・休み方改善ポータルサイト「年次有給休暇の計画的付与制度 導入の手続き」
・厚生労働省「確かめよう労働条件」年次有給休暇
※本記事は、2026年10月時点の法令(e-Gov法令検索)と厚生労働省の公表資料に基づいて作成しています。


