2026年10月、広島県と山口県の最低賃金が引き上げられました。
- 広島県:1,085円 → 1,141円(2026年10月11日から)
- 山口県:1,043円 → 1,101円(2026年10月8日から)
「うちは月給制だから関係ない」と思っていませんか。最低賃金は、時給のパートだけでなく、月給のスタッフにも適用されます。月給を時給に直して比べると、気づかないうちに下回っていることがあります。
この記事でわかること
- 広島県・山口県の最低賃金と、いつから変わったか
- 月給を時給に直して比べる方法(計算式)
- 比較に含める手当と、除く手当
- 下回った場合に何が起きるか
- 今日からできる確認の手順
📝1. 広島県・山口県の最低賃金はいくらに変わった?
| 改定前 | 改定後 | 引上げ額 | 効力発生日 | |
|---|---|---|---|---|
| 広島県 | 1,085円 | 1,141円 | 56円 | 令和8年10月11日 |
| 山口県 | 1,043円 | 1,101円 | 58円 | 令和8年10月8日 |
出典:広島労働局「広島県の最低賃金について」、山口労働局「令和8年10月8日から山口県最低賃金が改正されます」。
広島県の最低賃金は、広島県内で働くすべての労働者に適用されます。年齢・性別・雇用形態(常用・臨時・パート・アルバイトなど)は問われません。山口県も、山口県内で働く労働者が対象です。事業所のある県の額で比べます。広島県と山口県の両方に事業所がある会社は、事業所ごとに比べてください。なお、都道府県労働局長の許可を受けた場合に、法律で定める労働者について最低賃金額を減額する特例の定めがあります(最低賃金法第7条)。
📝2. 月給制のスタッフはどう比べる?
賃金の払い方によって、時給に直して比べる方法が決まっています(厚生労働省の案内)。日給制は「日給÷1日の所定労働時間」(ただし、日額が定められている特定(産業別)最低賃金が適用される場合は、日給が最低賃金額(日額)以上かどうかで比べます)、出来高払制は「出来高払賃金の総額÷総労働時間数」で時給に直し、日給+月給手当のように組み合わせている場合は、それぞれ時給に直して合計します。ここでは月給制を説明します。月給制は、次の式で比べます。
月給 ÷ 1箇月平均所定労働時間 ≧ 最低賃金額(時間額)
1箇月平均所定労働時間は、厚生労働省の換算例では「年間の所定労働日数 × 1日の所定労働時間 ÷ 12」で求めています。
計算例(当所の試算。数字は例です)
年間の所定労働日数が245日、1日の所定労働時間が8時間の会社の場合。
- 1箇月平均所定労働時間:245日×8時間÷12 = 約163.3時間
- 広島県:1,141円 × 約163.3時間 = 186,363.3…円。円未満を切り上げた 186,364円が、比べる月給の下限(除く手当を引いた月給がこれ以上なら、1,141円を満たします)
例:比べる月給が186,000円の場合 → 186,000円×12÷(245日×8時間)= 約1,138.8円。1,141円を下回ります。 - 山口県:1,101円 × 約163.3時間 = 179,830円が、比べる月給の下限(除く手当を引いた月給がこれ以上なら、1,101円を満たします)
ここでいう「比べる月給」は、次の章の「除く手当」を引いたあとの金額です。
📝3. 含める手当・除く手当
最低賃金の対象は、毎月支払われる基本的な賃金です。厚生労働省は、次の賃金を対象に含めないとしています。
- 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
- 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
- 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
- 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
- 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
- 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当
職務手当は、除かれる賃金に入っていません。厚生労働省の換算例でも「職務手当は除外されません」とされています。
月給に固定残業代を含めている会社は、その金額と対象時間が、就業規則や雇用契約書で区別されているかを確認してください。最低賃金の比較にどう含めるか判断に迷うときは、労働局や社労士に確認してください。
📝4. 下回っていたらどうなる?
最低賃金法の定めは次のとおりです(厚生労働省掲載の条文)。
- 第4条第1項:使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に、最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。
- 第4条第2項:最低賃金額に達しない賃金を定める労働契約は、その部分が無効となり、最低賃金と同様の定めをしたものとみなされる。
- 第4条第4項:労働者が自分の都合で所定労働時間・所定労働日に働かなかった場合や、使用者が正当な理由で働かせなかった場合に、働かなかった時間・日に対応する限度で賃金を支払わないことは、妨げられません。
- 第40条:地域別最低賃金額以上の賃金を支払わなかった場合は、50万円以下の罰金。
なお、特定(産業別)最低賃金を下回った場合は、最低賃金法ではなく労働基準法の罰則(30万円以下の罰金)が適用されます。業種によっては、特定最低賃金も確認してください。
つまり、契約書に最低賃金より低い金額を書いて本人が同意していても、その部分は無効です。最低賃金未満の賃金しか支払わなかった場合は、最低賃金額との差額を支払わなければなりません(厚生労働省の案内)。
📝5. 今日からできる確認の手順
- 全スタッフの雇用形態(時給・日給・月給)と、勤務している事業所の県を一覧にする
- 時給のスタッフは、時給が事業所のある県の最低賃金以上かを見る
- 月給のスタッフは、除く手当(通勤手当・家族手当・精皆勤手当・割増賃金・賞与など)を引いた月給を出す
- 1箇月平均所定労働時間(所定労働日数・時間から)で割って、時給に直す
- 下回る人がいれば、基本給や手当の組み替えを検討する
- 賃金規程・雇用契約書の金額や手当の書き方を見直す
下回りが起きやすいのは、次のような人です。
- 最低賃金との差が小さい人
- 手当で調整している人(通勤手当などで金額を合わせている場合は、除いて比べると下回ることがあります)
- 所定労働時間が増えた(または所定労働日数が増えた)のに、月給を変えていない人
📝よくある質問
時給のパートの人は、いつから新しい額にすればよいですか。
広島県は令和8年10月11日、山口県は令和8年10月8日から新しい額が適用されます。どの賃金計算期間の分から適用するかは、締日・支払日との関係もあるため、事業所のある県の労働局に確認してください。
通勤手当は月給に入れて比べてよいですか。
いいえ。通勤手当は最低賃金の対象となる賃金に含まれません。除いて比べます。
賞与は含めてよいですか。
1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)は、含めません。
職務手当は含めてよいですか。
含めて比べます。厚生労働省の換算例でも、職務手当は除外されていません。他の名称の手当は、上の6区分のどれに当たるかで判断します。
広島県と山口県の両方に事業所があります。どちらの額で比べますか。
労働者が働く事業所のある県の最低賃金で比べます。事業所ごとに確認してください。
パートや学生アルバイトも対象ですか。
対象です。年齢・性別・雇用形態は問われません。
📌まとめ
- 最低賃金は、広島県1,141円(2026年10月11日〜)、山口県1,101円(2026年10月8日〜)。効力発生日が県で異なる
- 月給制も対象。月給÷1箇月平均所定労働時間で時給に直して比べる
- 通勤手当・家族手当・精皆勤手当・割増賃金・賞与などは含めない
- 地域別最低賃金を下回る賃金を支払うと、50万円以下の罰金の定めがある(最低賃金法第40条)
自社の賃金が最低賃金を下回っていないか、賃金規程や雇用契約書の書き方に問題がないか、確認したいときはお声がけください。呉市の社労士が、会社の状況に合わせて整理します。
雇用契約書に関する、同じ2026年10月の改正については、パート・契約社員の雇用契約書に1項目追加の記事もあわせてご覧ください。
出典(厚生労働省・各労働局)
・広島労働局「広島県の最低賃金について」
・山口労働局「令和8年10月8日から山口県最低賃金が改正されます」
・厚生労働省「最低賃金額以上かどうかを確認する方法」
・厚生労働省「最低賃金の対象となる賃金」
・厚生労働省「最低賃金制度とは」
※本記事は、2026年10月時点の厚生労働省・広島労働局・山口労働局の公表資料に基づいて作成しています。


