2026年(令和8年)10月1日から、パートタイマーや契約社員を雇い入れるときに書面で明示しなければならない事項が、1つ増えました。

追加されたのは、「正社員との待遇の違いについて、会社に説明を求めることができる」という旨です。

雇用契約書や労働条件通知書のひな形を何年も同じまま使っている会社では、10月以降の採用・契約更新から記載が足りない状態になります。この記事では、何を・誰に・いつ書けばよいのかと、記載例をまとめます。

📝何が変わったのか

パートタイム・有期雇用労働法では、パートタイマー・有期雇用の従業員を雇い入れたとき、労働基準法で決められた事項に加えて、次の事項を文書の交付などで明示することが義務付けられています(同法第6条第1項)。

明示事項
これまで 昇給の有無
これまで 退職手当の有無
これまで 賞与の有無
これまで 相談窓口
2026年10月1日から追加 正社員との待遇の違いの内容・理由などについて、説明を求めることができる旨

根拠は、パートタイム・有期雇用労働法施行規則の改正(令和8年厚生労働省令第87号、同規則第2条第1項第4号)です。派遣労働者についても、派遣元が雇い入れるとき・派遣するときに明示する事項として、同じ趣旨の項目が追加されています。

もともと会社には、パート・有期の従業員から求められたときに、正社員との待遇の違いの内容と理由を説明する義務があります(同法第14条第2項)。今回の改正は、「説明を求められる」こと自体を、入社時の書面で本人に知らせるようにするものです。

👥対象になる人・ならない人

  • 対象:パートタイマー・アルバイトなどの短時間労働者と、契約社員・嘱託社員などの有期雇用労働者。呼び名ではなく、「同じ会社の正社員など通常の労働者より、1週間の所定労働時間が短い」または「契約期間の定めがある」かどうかで決まります。
  • 対象外:フルタイムで期間の定めのない従業員(正社員のほか、無期転換後のフルタイム社員など)は、この法律の「パートタイム・有期雇用労働者」には当たりません。なお、無期転換した方でも、所定労働時間が短いままの方(無期のパートタイマー)は引き続き対象です。

パートタイム・有期雇用労働法は2021年4月から中小企業を含めて全面的に施行されています。パートが1人だけの会社やクリニックも対象です。

📅いつ書くのか——「契約更新のとき」も含まれます

明示が必要なのは「雇い入れたとき」です。厚生労働省は、この「雇い入れたとき」には初めて雇い入れたときだけでなく、労働契約の更新時も含むと説明しています。

つまり、次の場面で新しい項目の記載が必要になります。

  • 2026年10月1日以降に、パート・契約社員を新しく採用するとき
  • 2026年10月1日以降に、有期契約を更新するとき

半年契約・1年契約を更新しているパートさんがいる会社は、次の更新時の契約書から対応が必要です。

✍️記載例(厚生労働省のモデル様式より)

厚生労働省が公表している改正後のモデル労働条件通知書では、「その他」欄に次のように記載されています。

・次の窓口に対して通常の労働者との間の待遇の相違(内容・理由)等について説明を求めることができる。
 部署名    担当者職氏名    (連絡先    )

自社の雇用契約書に入れる場合は、たとえば次のようになります。

待遇に関する説明の申出先
正社員との間の待遇の相違(内容・理由)等について、次の窓口に説明を求めることができます。
総務部 〇〇 〇〇(電話 000-000-0000)

記載するときのポイントは3つです(モデル様式の記載要領より)。

  1. 「通常の労働者」は、会社での呼び名(「正社員」など)に置き換えて構いません。
  2. 申出先(窓口)もあわせて書いておくことが望ましいとされています。 義務とされているのは「説明を求めることができる旨」を示すことですが、本人が円滑に申し出られるよう、モデル様式には申出先の記入欄が設けられています。部署名・担当者の職氏名は、本人が申出先を特定できるように書けば足ります。連絡先は電話番号やメールアドレスなどです。
  3. 従来からある「相談窓口」と申出先が同じ場合は、相談窓口の欄を「同上」などと書いて構いません。

明示の方法は文書の交付が原則で、本人が希望した場合はFAXや電子メールなどでも認められます(電子メールなどの場合は、本人が印刷して書面にできるものに限られます)。労働基準法で交付する労働条件通知書と1枚にまとめて明示しても構いません。

なお、明示する労働条件を事実と異なる内容にしてはならないとされています(同法施行規則第2条第2項)。昇給・賞与・退職手当の「有・無」も含め、実態に合った内容を記載してください。

⚠️書いていないとどうなるか

この明示義務に違反し、労働局の助言・指導を経て勧告を受けてもなお改善されない場合は、公表の対象となるほか、パート・有期の従業員1人につき10万円以下の過料の対象になります(同法第31条)。

金額よりも実務上の影響が大きいのは、書面に不備がある状態で、待遇についての疑問や不満が出てくることです。入社時の書類が法改正に対応していないと、その後の説明全体の信頼性が下がってしまいます。

💬「説明を求められたら」の準備も必要です

書面に1項目を足すだけでは終わりません。説明を求めることができると知らせる以上、実際に求められたときに説明できる状態にしておく必要があります。

雇い入れたときの説明(従来からの義務)
パート・有期の従業員を雇い入れたとき(契約更新時を含みます)は、求めがなくても、会社が実施している雇用管理の改善に関する措置の内容(賃金の決め方、教育訓練、福利厚生施設、正社員への転換の仕組みなど)を説明することが義務付けられています(同法第14条第1項)。個別に説明するほか、雇入れ時の説明会などで複数の方に同時に説明しても差し支えありません。今回追加された明示事項は、この雇入れ時の説明とは別に、「雇い入れた後に、待遇の違いについて説明を求めることができる」ことを知らせるものです。

求められたときに説明する内容
職務の内容や配置の変更の範囲などが最も近いと会社が判断する正社員と比べて、待遇にどんな違いがあるのか、その理由は何かを説明します。

説明の方法(2026年10月1日から指針が改正されました)
次のどちらかの方法で行います。

  • 資料を活用して、口頭で説明する
  • 説明すべき事項をすべて記載した、分かりやすい内容の資料を交付する

口頭で説明した場合は、使った資料を本人に渡すことが望ましいとされています。渡すことが難しい場合でも、あとで求められたときに閲覧させるなどの工夫に努めることとされています。

してはいけないこと
説明を求めたことを理由に、解雇・配置転換・降格・減給・契約更新の拒否といった不利益な取扱いをすることは禁止されています(同法第14条第3項)。

なお、本人から求めがない場合でも、契約更新の際などに、待遇の違いについて分かりやすい資料を渡したり、説明を求めることができると知らせたりすることが望ましいとされています。

✅今すぐ確認したい4つのこと

  • ☐ パート・契約社員用の雇用契約書(労働条件通知書)のひな形に、新しい項目が入っているか
  • ☐ 申出先(部署・担当者・連絡先)を決めているか
  • ☐ 10月以降に契約更新を迎えるパート・契約社員が誰か、一覧にしているか
  • ☐ 基本給・賞与・各種手当・休暇について、正社員との違いとその理由を説明できるか

4つ目が一番時間のかかるところです。同じ10月1日から「同一労働同一賃金ガイドライン」も改正され、退職手当・家族手当・住宅手当・夏季冬季休暇・無事故手当・褒賞についての考え方が新しく加わりました。手当や休暇に正社員との違いがある会社は、あわせて確認しておくことをおすすめします。

📌まとめ

  • 2026年10月1日から、パート・有期の従業員に明示する事項に「正社員との待遇の違いについて説明を求めることができる旨」が追加されました。
  • 新規採用だけでなく、有期契約の更新時にも記載が必要です。
  • 申出先(部署・担当者・連絡先)もあわせて書いておくことが望ましいとされています。
  • 書面の整備とあわせて、待遇の違いを説明できる準備をしておくことが大切です。

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同じ2026年10月1日に施行された改正については、カスハラ対策の義務化・就活セクハラ対策の義務化の記事もあわせてご覧ください。

出典(厚生労働省)
・リーフレット「パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが変わります(令和8年10月1日施行)」
・パートタイム・有期雇用労働法施行規則/雇用管理指針の主な改正事項
・改正後モデル労働条件通知書
・パートタイム・有期雇用労働法の概要

※本記事は、2026年10月時点の厚生労働省の公表資料に基づいて作成しています。